大和ハウス工業四国支店の主催で、司法書士法人ソレイユから司法書士の杉谷範子講師をお招きしてのセミナーに参加してみました。小欄でも度々書いていますが、私も「相続」をビジネスのネタにしようと考えていて、「家族信託」がこれからの相続対策の1つだと捉えています。
講師の杉谷範子司法書士も、信託の奥義までよくご存知のようですが、話を聞いていてその中でふと気づいたことは、「家族信託」は「信託契約書」に肝があるように思いました。これまでのセミナーで気づかなかった、何と愚かな聴衆者か。
11月に香川宅建協会3支部合同研修でお呼びした米田淳講師だけが、「信託契約書」を資料として付けていましたが、ここが肝なのですね。米田淳様は、偉い、パイオニア講師です。遠路大阪からお招きした講師ですが、知らぬこととは言え、改めて感謝を申し上げたい。
私も本日の話を聞きながら、やっとそれに気づきました。従って11月11日開催の米田淳講師のセミナーでは、久保喜治さんの要望として米田淳氏へ「信託契約書」の開示をお願いしました。恥ずかしながら、深いところは気づいていませんでした。久保喜治さんは、凄いと改めて驚きます。
従ってこの契約書自体を公開することは、ノウハウの流失であり、飯の種を廉価(講師料)で提供することになります。家族信託で何が出来ると考えるのではなく、「望むことを全てかなえて差し上げます」というのが、信託契約のようであります。
従って契約の本来のかたちに立ち戻り、1契約ごとに、全文を作るわけです。本日の講師の杉谷範子氏もそこのところを、柔らかに説明していました。事前に「見積もりを取りましょう」と表現されましたが、聴衆のほとんどは、この意味が分からなかったのではないでしょうか。
契約書を作る人のレベルによって、「信託契約書作成費」の金額が違うのです。そのための、事前「見積もり」です。実はこの話は11月東京で、相続アドバイザー協議会主催の信託セミナー「信託を活用した資産承継スキーム」にも既に言われていました。
しかしこの時は、東京での資産家の杞憂だと判断しました。信託契約書作成報酬が300万円ですから、総資産2~10億円の資産家のケースだと思いました。しかし高松の田舎では、数億円の資産家は私の周りにはいらっしゃいません。蚊帳の外の世界だと、私は漠然と考えていました。
しかし今日の話で、にわかに300万円の実感が湧きました。こんなことは今までに、なかったことです。不動産の売買契約でも、賃貸借契約でも、至る所に「ひな型」があって、それをそのまま若しくは少しアレンジして使っていたのが、これまでの日本の不動産契約の世界での常識でした。
契約書自体に「価値」があり、そこに対価を払う習慣は宅建業の世界では、存在していません。もっとも契約の国アメリカなどでは、契約ごとにオリジナル契約書が作られると聞いたことがあります。オリジナル契約書を案件ごとに作成し、それによって報酬が得られると聞いています。
ですから「オーナーレップ」とか「テナントレップ」とかいう、1つの契約に立場の違う不動産エージェント2人が関与して、それぞれに立場を主張した契約書を作成します。それを使って、契約をまとめます。過去の民主党政権下で、双方代理の日本での「媒介」が嫌われたのも、欧米ルールのコピーからです。
ここまで学んできて、確かに信託は使えると思います。信託銀行等がやる「商事信託」と、それ以外の「民事信託」とか「家族信託」とか呼ばれている信託共に、信託法によるところです。業として行うかどうか、それだけで前者後者と分類されています。
信託では、自分らの財産(個人と法人もある)を託す人を「委託者」と言い、受ける人を「受託者」と呼び、ここが信託銀行や個人となり、もう1人「受益者」が登場します。委託者=受益者も、良くある話しです。また不動産等登記又は登録制度がある財産は、受託者へ例外なく所有権登記もしてしまいます。
ここに、心配の種があるのです。本日の質問の中で、講師が明確に答えていなかった(質問者の問いにも問題が山積)ことに敢えて答えます。後者では、信託を受ける人(受託者)の経済的立場が弱い。万一、受託者が破産したらどうなるか。
受託者が破産手続きの決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は破産財団に組み込まれません。また受託者が更生手続き開始の決定を受けた場合も、信託財産に属する財産は倒産手続きに組み込まれません。受託者が他に対して負っている債務と相殺もされません。
こんなことを言ったら話しがややこしくなりますが、では受託者が信託財産を私利私欲のために売ってしまったらどうなるか。売らなくても、抵当に入れて資金化し、委託者の与り知らぬところで浪費したらどうなる、とかの問題はあります。信託法の改正で、信託銀行等以外が受託者になったが故の事態です。