新年明けましておめでとうございます。今年もどこまで続くか、行けるところまで頑張ります。元日は3社周りのほか、することがありません。昨日に引き続き少し長くなりますが、やはり今年の課題「相続」がらみで書いてみます。
週刊エコノミスト2014/7/29の記事が、分かりやすいので引用しています。今日(27年1月1日)から始まった相続税増税ですが、「相続税の負担を少しでも軽くしたいならば、預貯金など金融資産を持つよりも不動産にした方が断然有利だと言われるが、それはなぜか」という特集記事です。昔から言われています。
1億円の「現金」は、相続税評価額もそのまま1億円で変わらないのですが、「不動産」の相続税評価額は、通常時価よりもかなり低くなるのです。そのため、「不動産」の場合は相続財産がその分、圧縮され、結果として相続税額も「現金」に比べて下がることになります。
現金・預貯金の相続税評価額1億円に対して、建物を5,000万円土地を5,000万円で購入すると、土地は時価5,000万円の土地を路線価で評価すると5,000万円×80%=4000万円。さらに貸家建付地の評価額は、4000×[1-50%(借地権割合)×30%(借家権割合)]=3,400万円となります。
一方建物は、建物の固定資産税評価額は、時価5,000万円×70%=3,500万円。貸家の評価額は、3,500万円×[1-30%(借家権割合)]=2,450万円。従って土地と建物の相続税評価額は、土地評価額3,400万円+建物評価額2,450万円の合計5,850万円となります。ざっと6割評価まで、圧縮が出来るのが節税のミソです。
ただし、不動産することのデメリットもあります。①遺産分割のしづらさ②相続税の納税資金に困る③不動産投資のリスク④賃料収入による相続財産の増加など。一番の心配は、③不動産投資のリスクでしょう。入居者が長期にわたり予測された賃料でつくかどうか。
最近は、賃貸住宅も空室が増えています。従って新規の建築着工は、ハウスメーカーの30年一括借り上げの付いたものがほとんどです。例えばD社が建築を請け負えば、完成した物をD社管理という子会社で一括借り上げをします。これだと毎月の金融機関への返済も安心だし、100%入居ですから相続にも適しています。
しかし片方では、本当に30年間約定賃料で大丈夫だろうかという心配も頭をよぎります。管理会社の言うように、10年毎のリフォームにも出費がかさむ。応じないと、借り上げを切られるという心配もあるかも知れません。一括借り上げをサブリースと言いますが、借り上げ賃料は一般管理の場合に対して安くなりがちです。
確かに相続財産に賃貸物件を持つことは懸命な判断ですが、以前に小欄に書いたように、生命保険を活用するなどトータルに考えることが大切です。それも身の丈に合った対策を心がけることです。都会と香川県下では、地価が違いすぎます。評論家になっている人のアドバイスを聞いても、意味がないかも知れません。
次ぎに贈与についても、生命保険同様に活用の成否で大きな違いが出てきます。贈与税の課税制度には、暦年贈与(暦年贈与課税)と相続時精算課税の2つがあります。暦年贈与は歴史のあるこれまでの贈与方法で、今年は年間110万円までの贈与なら非課税です。
相続時精算課税は、60歳以上の親または祖父母である贈与者が、贈与者の推定相続人である20歳以上の子または孫に対して、2,500万円までの贈与財産を贈与時に一端非課税で贈与できる制度です。ただし仮処理的な意味合いが強く、相続が発生したら相続財産に持ち戻します。
贈与財産の価額の合計額が2,500万円を超えた場合には、その超えた金額の20%の贈与税を納付しなければなりません。相続時には、その贈与がなかったものとして贈与財産は贈与時の価額で相続財産に加算され、納付した贈与税がある場合には、相続税から控除されます。
なお、相続時精算課税制度をいったん選択すると、暦年贈与には戻れなくなりますので、注意が必要です。ただし、父親からは相続時精算課税制度を使い、母親からは暦年贈与を使うとか、またその逆的な使い方も許されています。
ここからはあまり言われていないことですが、例えば長男が暦年贈与を選択し、次男が相続時精算課税制度を使うと、結果として、次男が相続時精算課税を選択するかどうかで100万円単位で相続税が変わることがあります。
この最大の原因は、次男に対する暦年贈与の非課税贈与(年間110万円以下贈与)が使えていないからです。相続時精算課税の選択は、上記のような問題を含んでいるため、適用にあたっては熟慮が必要となるでしょう。
ところで、贈与というと近年話題になったのが「教育費の一括贈与」です。信託銀行等に専用の教育資金口座を作るなど、決められた手続きに従って祖父母などが孫などの教育費を贈与した場合、1,500万円までは非課税で贈与できるという制度で、平成25年4月1日に施行されました。すでに動いています。
利用なさっている方も多いということですが、実は、そもそもこの制度が出来る前から、祖父母から孫への教育費の贈与は非課税だったということはご存知でしょうか?非常識な額でなければ、特に上限額も決められていません。小遣いをやるのと同じ感覚です。
ただし、“その都度贈与”と言って、教育に関する費用が発生した都度、その額だけの贈与としなければ、課税の対象になってしまうというルールです。そもそも「贈与」は、その都度の諾成契約と言われているからです。
「あげますよ」「ありがとう頂きます」という双方の意思の合致と、それを証する契約書が必要です。契約書は、税務署に対しての準備物で、もちろん本来当事者には必要ないかもしれません。でも念のために・・・。入金も孫の口座に振り込んで証拠を残す。
では、「教育費の一括贈与」は意味が無いのか、そんなことはありません。「その都度贈与」は祖父母が生きている間しか出来ませんね。「教育費の一括贈与」は万が一祖父母がお亡くなりになってしまっても、指定の金融機関から無税で必要な金額を引き出すことが出来るのです。
こんな特徴をしっかり押さえた上で、上手く制度を利用したいですね。ただし、孫が30歳になったときに金融機関にまだお金が残っていたら、その残額に対して贈与税が課税されてしまうので、注意が必要です。勿論海外留学も、教育費に含まれています。
さあいよいよ、新しい年の始まりです。今年の年始はことのほか寒かった。寒さに負けず皆様お元気に過ごされますようにお祈りしています。明日から箱根駅伝が始まります。堅い話はここまで。
この小欄に記載の情報は、法律上又は税務上の助言ではなく、この記載内容でもって、専門家の助言に代えることはできません。またこの内容は、2014年12月20日現在の税制に基づいています。ただし正月元日から施行の内容にしています。今後税制は、相続贈与に限らず変更することがあります。