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人口減少時代の土地問題by吉原祥子
中公新書から、2017年7月25日に初版が出た表題の著書。副題に、~「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ~とあります。所有者の居所や生死がすぐにわからない、いわゆる「所有者不明の土地」がどんどん増えています。土地所有者の所在や生死のゆくえがわからなくなる大きな要因に、相続未登記の問題があるのです。

そもそも「不動産登記制度」は強制ではなく、一部を除いて基本的には任意なものです。建物表示登記など義務化のものもありますが、罰則規定がないために、事実上骨抜きになっています。民法第177条には、登記することにより第三者に権利を主張できると書かれています。つまり、「得をしたいなら登記をしたらどうですか」となっています。

このことから昨今のように、「不動産神話」が崩壊し、地価が安くなりすぎたら、得をするどころか登記をするための「登録免許税」や固定資産税の課税がおこるとして、登記をしない方が得だと考える傾向が、流行のようになっています。

また登記手続きも、煩雑になっています。相続人全員の戸籍謄本や住民票の写しを取得して親族関係を調べ、相続関係説明図をつくり、法定相続人を特定する。その上で、登記の名義変更について、相続人全員から同意を取り付けます。この時には、実印と印鑑証明が必要になります。実印を持っていない人は実印も、この機会につくらざるを得ません。

相続人の中に、所在不明や海外在住などで連絡の取れない人が一人でもいたら、手続きのための時間や費用はさらにかかります。宅地はまだしも、農地や山林になると、どこにあるのか見たこともないというケースも散見されます。先の東日本大震災の復興事業でも、移転登記が出来ていないがために、大変なマイナスが出ています。

2015年に全面施行になった「空家等対策の推進に関する特別措置法」で、未登記の不動産でも市町村の固定資産税課が握っている「所有者情報」をその他の部署でも使えるようになって、空き家対策は前へ向いたのですが、これとても、「相続未登記」状態の解決策にはなりようがない。

国土交通省が行った調査によれば、最後に所有権に関する登記が行われた年が50年以上前のものが全体(400サンプル)の19.8%、30~49年前のものは26.3%にのぼっている。登記しなくても、何も困らないからという考えが浸透しすぎている。相続登記の手続きは、土地の売却や、住宅ローンを組むために抵当権を設定するといった、必要性が生じた時に行われる。ここでも、損得勘定が働く。

また小欄で何度も書いているように、登記も任意なくらいだから、国土管理の主体である国・県・市・町の動きも鈍い。国土管理の基本となる「地籍調査(土地一筆(いっぴつ)ごとの面積、境界、所有者などの基礎調査)」も、1951年の開始以来、いまだ全国では5割(52%)しか進んでいない。残りの48%を平均進度といわれる0.4%/年で割ると、完了までにはあと120年を要する。

国土交通省によると、2010年4月1日時点で全国の法務局に備え付けられている図面は約681万枚。そのうち284万枚(42%)は、地籍調査後の「不動産登記法第14条地図」ではなくて、明治時代にさかのぼる図面や情報をもとに作成されたもの(公図)を未だに活用している。法律で、法務局に地図を備え付けることになっているのだが、精度は問わない。

こんなこともある。北海道の調査によると、道内で海外資本などによる森林所有面積は2,411ヘクタール(平成16年12月末現在)、そのうち少なくても約460ヘクタールは租税回避地である英領ヴァージン諸島に住所を置くペーパーカンパニーの所有とみられる。果たして現行の土地制度で、こうした土地の所有者を見つけられるのか心許ない。

「所有者不明化」問題の本質は、人口減少、高齢化、そしてグローバル化といった時代の変化に、不動産登記制度を始めとする今の日本の土地制度が対応出来ていないところにある。土地の「管理の放置」と「権利の放置」は、こうした時代変化に社会の仕組みや法制度が追いついていないことのあらわれでもあろう。

先述のとおり、日本では権利の登記は、第三者への対抗要件である。これは「不動産の売買などによる権利の変動は、当事者間の契約によって成立する。ただし、第三者に権利を主張するためには登記を必要とする」という考え方であり、フランス法の考え方を採用したもの。フランスの登記制度もこの原則に立っている。

一方ドイツでは、登記は成立要件(もしくは効力要件)である。これは登記をしなければ、権利の変動そのものが成立しないという考え方である。そのため所有権の譲渡のためには、公証人の立ち会いのもと、売買契約と所有権譲渡についての契約を締結しなければならないなど、厳格な手続きが必要となっている。

結論としては、登記を簡素化し義務化して、実態の把握が比較的容易に出来るようにし、その情報は基礎自治体でも固定資産税徴税情報とリンクして共有し、肝はマイナンバー登録制度と一元化したら、現段階で考えられるパーフェクトになろう。大変興味深い読み物でした。


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| 社長日記 | 09:28 AM | comments (0) | trackback (0) |
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