最近アパート融資に対する警鐘を鳴らす記事が、多くみられるようになってきました。なぜアパート融資が拡大し、何が問題であるかここで整理しておきたいという業界メールを引用させていただきます。私も、警鐘を鳴らす一人だからです。
銀行などの金融機関不動産融資は、1990年前後のバブル期を超える金額になっています。2016年の金融機関の不動産向け新規融資は、前年比15.2%増の12兆2千億円となり、バブル期であった1989年の10兆4000億円を超えて過去最高の買い出し額になっています。
主因は、貸家経営に乗り出す個人への「アパートローン」の急増。超低金利で無担保・頭金無しなどの条件で、気軽に大金を借りて不動産に投資するサラリーマンや地主が増加しているのです。もう1つは、古典と言われる「相続対策」。
貸家の新設着工件数は、8年ぶりの高水準になっています。昨年の貸家の新設着工戸数は、41万8543件と8年ぶりの高水準となっています。理由のひとつは、先にも書いた相続への悩み。2015年の税制改正で、相続税の課税対象が広がったことが挙げられます。
この課税強化と土地の価格の上昇により、相続税の課税対象になった被相続人の割合は2014年の4.4%から8.0%に上昇。そこで現金より不動産の方が、課税対象額が下がるという“節税ニーズの高まり”と世の中に出回るお金が増加するきっかけとなったマイナス金利をはじめとする“日銀の金融政策”が、不動産向け融資の拡大へと繋がっている。
建設費の貸出金利も1%くらいのため、富裕層のオーナーにとってはさほど懐が痛まない。融資する金融機関もアパート事業の成否でなく、オーナーの財産の評価で担保価値を判断できる。このように貸す側も、簡単に稟議書が書けるわけです。
では、アパート建築増加と融資急増の何が問題かなのかを、考えてみる。人口が集中している東京都をはじめとする大都市圏に留まらず、都市郊外や東北や山陰といった人口が減少し続けている地方部にもアパート融資が広がるなど、人口動態を無視した建築が進んでいることが第1の不安材料。
融資する金融機関も事業性融資が伸びない中、数少ない融資のひとつとして「アパートローン」を積極的に展開している。中長期の入居見込みを確認しないで融資しているケースも散見され、融資実態は不明だ。ある金融機関では、ハウスメーカー向けのアパートローンの貸し出しをやめたという話も漏れ聞きます。
さらに運転資金の名目で借りる事業性融資が、実はアパート建設向けだったりするなど金融機関によって定義はあいまいで、発表されている日銀統計はメガバンクや地銀が対象で、ノンバンクを含まないなど実情を反映していない可能性も指摘されている。
また、サブリース契約でトラブル多発している。オーナーと供給サイド(主にハウスメーカーやその子会社)がサブリース契約を結ぶと、一定期間の家賃収入を保証する仕組みを採用しているケースが多いが、その期間や家賃の減額についてトラブルになるケースが多い。
例えば10年間は家賃が変わらないという当初契約だったのに、6年後に10万円減額されたケースなど、業績悪化などの理由で家賃を減らしトラブルになるケースが増えている。もともと多くは建築費で、利益を確保している。
このような中で昨年国交省では、昨年秋にサブリース契約において「家賃保証契約に関する十分な説明」をするよう管理業者に求めるなど、理解が不足しがちなオーナーへのしっかりとした対応が望まれる。われわれ仲介業者も荷担していて、偉そうには言えないが、アパートよりは「戸建て賃貸物件」をやるならお勧めする。