2014,03,14, Friday
平成25年9月16日付の日経新聞によれば、「わが国の65歳以上の高齢者が過去最大の約3100万人を超え、総人口に占める割合も25.04%に達し、4人に1人が高齢者という時代を迎えた」旨を伝え、わが国の社会が本格的な高齢社会になっていることを示している。
このような高齢化社会特有の問題に対応した制度には、「成年後見制度」があるが、これは成年被後見人等に属する財産の管理を行うためのものであり、相続対策のようにより積極的な財産活用の点からは利用しにくい側面を持っています。今では「使えない」という烙印を押されています。 そこで、高齢等に伴う判断能力の低下といったリスクを事前に回避する方法であり、また、特定の者の特定の財産やその財産から生じる収益を承継や受益させる手法として信託制度を活用した方法、いわゆる家族信託(または民事信託、以下家族信託)が近年注目を集めています。 信託を素人的に大雑把に言うと、自分の所有する不動産を第三者を介して、法的に所有使用してもらい、そこから得られる果実を自分や自分の指定する者に与える仕組みといえると思います。 平成18年に信託法が改正され、信託が以前よりも利用しやすくなりました。一般的に信託では、「信託財産」「委託者」「受託者」「受益者」の1物3者が登場します。大雑把に言うと、受託者となるのが信託会社、信託銀行である場合を商事信託、親族及びその周辺の人である場合を家族信託と言います。 税務上の取り扱いですが、信託される財産の所有権は、委託者から受託者に移転します。これが信託の大きな特徴ですが、自益信託では売買や贈与による所有権の移転とは異なるので、税務上は譲渡に伴う所得税等や贈与に伴う贈与税等、または法人税も課税されない。 しかし不動産については、分別管理義務と第三者に対抗するため、所有権移転登記と同時に信託登記をしなければならないと規定されています。信託の役割は、判断能力は低下せずとも、体力が低下し、健康を害しているとき等に本人(委託者兼受益者)に代わって、受託者に財産を管理・運用等(処分を含む)をしてもらう委任的な役割が見込まれるのです。 家族信託を使った事例はいろいろ考えられのですが、一般に多く使われると思うのが、事業用資産から得る利益を特定の家族に承継させたいという場合の信託。例えば築古で空室率が高い賃貸マンションを1棟経営している高齢のオーナーが、リフォームをするべきか、それとも建て替えるべきか悩んでいる。経営判断が必要だが、その判断については跡を継ぐ長男に任せたいと考えている。このような場合には、オーナーが委託者兼受益者で、長男が受託者となります。 なおこの場合、オーナーは別途遺言書を作成しておくことにより、賃貸マンションを誰に相続させるか決めておくことが出来ます。このような信託契約をオーナーと長男の間で締結しておけば、長男は当事者として各種契約を締結できることになり、オーナーは経営を長男に任せることが出来ます。 さらにオーナーの賃貸マンション土地は先々代から受け継いだもので、出来れば長男、孫の代にわたっても継続して所有してもらいたいと考えています。またオーナーは自分の生前中は賃料収入を受領し、死亡した後はその権利を妻に移し、妻の生活の基盤を確保したいと考えているのです。 この信託は、「跡継ぎ遺贈型信託」と言われることがあります。受益者連続信託を利用すれば、一定の期間制限はあるが、跡継ぎに連続して遺贈することをあらかじめ定めておくことも出来ます。一考に値する制度の誕生ですが、「成年後見制度」の使い勝手が悪いが、これはどうですかね。 |