2014,05,12, Monday
「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法と副題のついた、岩崎夏海さんの本です。一言で言うなら、まずいラーメン屋は、ネットの書き込みで潰されたというものですが、それはこれまで、みんなが立地のよさだけで通ってくれていただけで、美味くない食は遠からず必ず淘汰されるものです。ネットが悪いとは、書いていません。
私は読んでいないのですが、この岩崎夏海さんは、「もしドラ」の著者なのですね。確かにこの本書(まずい・・・)の中で言っていることには、私も合点がいきます。「もしドラ」は、272万部の大ベストセラーで、正式には「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」だったと思います。 県内一の進学校の弱小野球部のマネージャーが、ある日長期入院します。代わりに主人公の「みなみ」がマネージャーに就任します。マネージャーの仕事が分からない「みなみ」は、ピーター・F・ドラッカーの「マネジメント」を、マネージャー養成本と思い読みます。 しかし野球部のマネージャー養成とはまったく無関係な『マネジメント』は経営の本で、野球については何の記載もなく、「みなみ」はがっかりしましたが、それでも、「世界で一番読まれた本」という言葉に期待を寄せ、読み進めました。 その本を手がかりに、みなみと野球部員が甲子園を目指して、成長していく様を描いた、青春本です。岩崎夏海さんは、経営のバイブルであると信じている『マネジメント』をドラマの中で展開しています。これが教室の黒板の前では、これまで通り、読者には相手にされないのです。 まずいラーメン屋はどこへ消えた?の中で岩崎夏海氏は、ドラッガーのマネージメントにも触れています。そこが彼の原点であり、彼自身放送作家をやりながら、「マネジメント」を学びその2つを融合させて、「もしドラ」を完成させたと彼は言いたかったのです。 約10年続けた放送作家業に挫折し、またプロデュース業やビジネスにおいても、凡庸な才能しか持ち合わせていなかった作者は、やがてある時、この両方を掛け合わせみることを思いついたのでした。2つを掛け合わせることで、新しいものを作り上げたと言えると思います。 その成果は、それまでの読む本という役割だけでなく、プレゼントする本として意図的に作られています。これまでの1人が1冊買う出版業界の常識を払拭し、プレゼント用に1人が5~10冊買う本を作り上げたのです。 「もしドラ」を書き上げてみると、それは競争相手のいない、全く新しい分野を生み出していたのです。なぜなら、これまでのビジネスの知識をエンターテイメントの方法論で表現する存在がいなかったから。それは無人の広野だったのです。 さて「まずいラーメン屋はどこへ消えた?」ですが、もう競走では生き残れない、競走しないことを訴えています。そしてどうすれば新しい価値を見つけられるか?そのためには、今あるもの(プチ成功)を捨てるのです。そして競争しないで横にずれるのです。 その成功例として、アマゾンなどの大企業を例にとっていますが、アマゾンは、通販においては「本からそれ以外の物を売る」というふうに「横」にずれていったし、書籍においては、「紙の書籍から電子書籍、さらにはデバイスの制作や出版エージェントまでこなす企業になっています。 このような原稿を書きながら、NHKの「プロフェッショナル(仕事の流儀)」を観ていたら、真鍋大度という青年が紹介されていました。先の岩崎夏海さんと同じで、一つことに挫折を感じ中途半端な自分が嫌になり、これまでの仕事をやめた。 そして今の、コンピュータを駆使した映像の魔術師という、これまでになかった仕事の範疇を打ち破る存在を作り上げています。仕事の依頼は、「紅白歌合戦」から、生のライブまで、そして国内外から依頼が殺到しています。彼の専門性をNHKは、テクノロジーと発想とプログラミングの三要素と分析しています。 私もこれからを生きるのは、「多能工」という発想をしています。これまでは、「一つことコツコツ」で一流になれたし、そのままハッピーな人生を終えることが出来ました。しかしこれからは、2つ以上の「得意・専門」を組み合わせて新しいものを想像していかないと、物心両面の幸福のなかで生き続けられないと思います。 |