2015,08,04, Tuesday
今年の6月から、改正基準法が8年ぶりに施行されました。8年前と言えば、姉歯建築士による構造計算偽装事件が発覚し、規制が強化された年でした。それに比べて今回の改正は、緩和規定が目立っています。建築基準法は、建物建築時の規制ですから、社会事情に大きく引っ張られています。
主な改正点は、大規模木造の適用範囲を拡大し、超高齢化社会へ向けて容積率を緩和したり、構造計算適合判定の手続きを柔軟にするなどの法改正です。これまでも、マンションなどの共同住宅をはじめとする居住用の建物については、建物の延面積の3分の1までの地下室については、容積率にカウントしないとなっています。 また今回は、高齢者施設(養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム、有料老人ホーム・グループホーム・児童養護施設など)の地階についても、共同住宅と同様に延面積の3分の1までは、容積率から除外されることになりました。 このような施設では、厨房・浴室など、地下でも許される用途の部屋を地階に設置すれば、その分、地上部分に住室や共用部分を多くとれるようになります。特に階高を必要とする厨房を地下に設置することは、効果的です。ただし、出来るとするとは大きく違います。コスパーも、当然考慮に入れて計算下さい。 次ぎに、エレベーター昇降路を容積率から除外することについて、説明します。この改正は平成14年7月施行済のものですが、既存建物でエレベーターがないために、高齢者が住み続けられない集合住宅でも、新たに設置することが出来るようになりました。 新築建物に適用されるのは当然として、この改正は既存建物にも適用されるため、既設のエレベーターあり容積率を目一杯使っている建物では、容積率が余ることになります。エレベーターの昇降路は1台4㎡ですから、10階建の建物なら40㎡分が余裕面積として生まれることになります。 この新たに生まれた容積率を利用して、各階の共用部分にトランクルームを設けたり、集会施設など付属施設を設けることも考えられます。そもそも論ですが、容積率というものは、敷地に対してどの程度(総床面積)の建物が建てられるか を問う数字です。 住宅地などでは200%、つまり50坪の敷地では総面積100坪までの建築が可能だと言うことです。これに比べて商業地などでは、400~500%と決められていて、総面積の大きいものが建てられるわけです。そして都会ほど、土地代が高いがためこの容積率一杯を使って、レンダブル比を上げるのが設計の責務になっています。 また学生寮や社宅など、階段しかない建物を高齢者施設にコンバージョンするような場合、容積率一杯でもエレベーターを新たに設置することが出来ます。 しかし昇降路が容積率から外されても、床面積や建築面積には算入されます。またエレベーター機械室は、緩和の対象にはなりません。 さらにこのエレベーターの昇降路容積率不算入は、あくまでも乗用エレベーターに限られていて、荷物用エレベーターや機械式駐車施設での緩和措置はありません。 3つ目の改正は、建物の仮使用認定を民間に開放しています。新築の建物では、上層階は共同住宅や事務所として完成しても、1階のテナントが決まっていないケースが少なくありません。当然テナントビルでは、1階賃料が高いのです。 このような場合には、内装を最低限に仕上げて完了検査を受ける場合と、特定行政庁に「仮使用承認」の提出をして、承認後1階テナント部分を残して建物の完了検査を行い、仮使用として建物を使用することになっています。 この部分の改正により、「仮使用認定」と名称が変わり、特定行政庁(都道府県と一部区や市)だけでなく民間の指定確認検査機関での認定が出来るようになりました。現在では民間の指定確認検査機関が、建築確認手続きの9割近くを担っております。 これで建築確認から、仮使用認定、完了検査までをワンストップで、指定確認検査機関での手続きが出来るようになります。実態に合わせた改正が、「建築物」の世界でも確実に進んでいます。本日小欄のネタは、ユニ総合計画のクリーンレポートからお借りしました。秋山英樹先生、分かりやすい解説、ありがとうございます。 |