2008年9月「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った」(徳間書店)を上梓した安部芳裕氏と、盟友の佐々木重人氏の共著であります。2009年7月1刷ですから、最新版ではありません。後半は、2人の対談というスタイルです。私の興味は、アメリカの歩んできた金融政策のまとめです。
国際的な金融システムを造り上げたのはユダヤ人でした。昔のヨーロッパはキリスト教社会で、ユダヤ教徒は「イエス・キリスト」を十字架にかけて殺した罪人」として迫害されていました。ほとんどの職業に就くことが禁止され、土地を持つことも制限されたため、農業をおこなうことも出来ませんでした。
唯一許された職業が、キリスト教徒から忌み嫌われていた利子を取り扱う職業「高利貸しや金塊の保管人、両替商(貿易決済業)」などでした。当時、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教では、利子の徴収は原則として禁じられていたのです。しかしユダヤ教だけは例外として、異教徒からは利子を取ることが許されていたのです。
このように現在の金融業は、ユダヤ人への迫害から生まれてきたものとも言えるものなのです。ユダヤ人は自ら構築した金融システムのノウハウを積極的に提供していきます。それが膨大な資金需要を生んだ産業革命という時代の波に乗り、資本主義を世界へ広めることになります。
これまでのようにお金をコントロールすることが出来なくなった国家は、銀行とある取引をおこないます。それは、政府がお金を必要とするとき、銀行は必ず供給する。その代わり、中央銀行がお金を発行し管理する権利を得るという協定です。こうして銀行券は、中央銀行のみが発券するという制度が誕生し、世界各国へ広まっていくことになります。
1913年、アメリカでFRB(連邦準備制度理事会)が設立されます。FRBは1907年の金融危機を教訓として誕生しました。FRB(連邦準備制度理事会)は、アメリカ政府が1株すら保有していない民間銀行カルテルです。世界大恐慌(1929)の原因は、1920年代にFRBの指示で銀行が信用創造量を増やしたことにあります。
その後、世界は混沌のまま第二次世界大戦へ突入していきます。戦後、世界の金の65%がアメリカに集中したそうですが、その理由の一つは、第二次世界大戦が膨大な物資の消耗戦であり、アメリカがその資源供給国となったため。もう一つは、それまでの金融の中心地であったイギリスからアメリカに資金が移動してきたためと言われています。
金がアメリカに集まっていたことが決めてとなり、1944年に開かれたブレトン・ウッズ会議で、アメリカは世界の銀行という役割を担うことになります。ドルが世界の基軸通貨となり、「米ドルのみが金と交換可能で、他国のお金は米ドルと交換できる」という金為替本位制がとられることになります。
アメリカは、金の準備量を遙かに超えたドルを発行して世界中にばらまいたため、金との交換を保証できなくなりました。そして1971年(昭和46)、当時のニクソン大統領が「ニクソン・ショック」と言われるドルと金の交換停止を一方的に発表します。これにより、金為替本位制は崩壊します。
お金は、金という実物資産との価値の連動を失い、今度は需要と供給のバランスによって価値が決まる変動相場制がとられるようになります。またこの頃からのコンピューターの発達に乗って投機が過熱していきます。お金自身が商品となり、「投機的利益の道具」となったのです。
コンピューター上の数字となったお金は、24時間一瞬たりとも休む間もなく、利潤を求めて世界中を駆け巡るようになりました。2008年6月時点でデリバティブの総計は約684兆ドルまで膨れあがっていて、これは世界中の全国家のGDPの10倍以上をはるかに超えた金額です。この実物経済からかけ離れ巨大に膨れあがった投機マネーが、1990年代後半に世界各国で金融危機を引き起こすことになります。
金融業者やマスコミから神の如く崇められたグリーンスパン前FRB議長の発言により、現在は「100年に1度の危機」と呼ばれています。金融危機の震源地であるアメリカでは、投資銀行のゴールドマンサックスと2位のモルガン・スタンレーが投資銀行業務を廃止し、3位のメリルリンチは身売り、4位のリーマン・ブラザーズと5位ベアー・スターンズは破綻、保険会社トップAIGは実質経営破綻で巨額の資金援助を受け続け、自動車ビック3も倒産寸前。
住宅ローンが返済不能となったアメリカ人は、500万人にも達し、住宅市況は前年比マイナス19%で未だ先が見えず、マイアミやサンフランシスコでは住宅価格が半値近くになっても下落し続けています。半失業状態の人を加えた失業率は13.5%となり、カリフォルニア州、オレゴン州、ミシガン州などでは20%にも達しています。
偶然手にした本ですが、まだまた書きたい歴史と今が綴られています。お盆は流石に行事がなくて暇していますから、本ネタになっています。明日も、「市場と権力」竹中平蔵氏の歩みを実名で書いている佐々木実氏の本ネタの予定です。折角の休暇なのに、いつもと変わらない数の読者がのぞきに来てくれています。ありがとうございます。しかし、あんたも暇してるの?