2016,06,06, Monday
確か、㈱宗家久つ和堂の田村日出男会長から頂いた本だと思います。田村優之さんは、田村日出男様のご長男さんです。彼は、日本経済新聞社勤務の現役記者さんだったと記憶しています。この「青い約束」は、前に読んだことがあるなと薄々感じながら読み進めていました。
全体的に読みやすい流れで、田村さんの文章に私は好感を持っています。最後に、「この作品は、2007年7月にポプラ社より夏の光として刊行されたものに加筆修正し、改題しております」と説明がされていました。なるほどと合点しました。確かに、債権と金利などの記載が加筆されたものだと思います。 「青い約束」で主人公の宮本修一は、今は証券会社の敏腕チーフアナリストとして働いている。彼の書く予想記事は、「通」から高い評価を得ていた。その修一が、20数年前の”ある事件”を機に音信を断っていた親友で、新聞社の経済記者として働いている有賀新太郎と偶然再会する。 共に物わかりが出来る40代になった2人だが、理想とはほど遠い社会のなかで孤高に信念を貫こうとしているところは似ている。”高3の夏のあの事件”で失ったひとりの死者への思いを胸に、それぞれの道を走り続けてきた二人。修一の知らなかった事実が、親友の有賀から告げられる。 そういったきらめくような青春時代の回想と、金融業界という名のいびつなリングの上で権力と闘う二人の話が交互に進んでいく。特に金融業界の話題は、大変興味深いものでした。青春のラブストーリーに、暗黒が漂う。 一方「青い記憶」は、ストーリー展開の中心地はパリで、自分の周りにおこった青春時代の不幸を、包み隠さず息子に手紙として残す父親と今はなき母親の言葉が父親から告げられる。 またその息子が、交換留学生としてパリに赴き、父親の淡い暗い青春の出来事の秘密を聞かされる。要するに、謎解きの展開だが、読者を離さない展開が続く。 田村優之さんの本を全部読んだわけではないが、初期の頃に比べたら失礼ながら、作家としても、ドンドン成長されている。青い記憶の中に書かれている絵の色にも拘っている下りなどは、村上春樹の10作目の長編小説『海辺のカフカ』を彷彿させる。「楽しいことが、いっぱいあるよ」、本の中でもそう言っている。 |