アメリカ在住で、身の回りに起きた事件のレポートを書き続けている冷泉彰彦氏が、大統領選挙直後に標題の本を上梓したと聞いて、早速読んでみました。驚きとして受け止めるだけではなくて、日本はどう考えたら良いのか、そのあたりの氏のアドバイスが貴重だと考えて紹介します。
2016年11月8日の長い夜が更けて、次の時代への予兆が始まっていった。その基調のトーンを作ったのは、他ならぬ主役のトランプ自身であった。熱狂的に盛り上がったニューヨーク市内の勝利集会に登壇したトランプ次期大統領は、「静かに」勝利宣言を行った。
ここにおいてトランプという人は、暴言大魔王であった「異端の候補」とは全く別人になった。静かな口調で「今は対立の傷を癒やすとき」であると述べ「アメリカの和解と団結」を呼びかけたのである。クリントン候補への訴追もしないと、明言した。しかしクリントン問題は、FBIが既に動いている。
一部からは、それは「白人のアメリカだけの団結だろう」という揶揄も聞こえてきているが、そうではないだろう。選挙戦を通じてキープしていた軽薄な「エンタテーメント調のパフォーマンス」とは明らかに違うトーンからは、「この人物は本気で合衆国の舵取りをする覚悟を決めた」と感じさせる気迫がにじんでいた。
昨日の小欄でも書いたのですが、イギリスもアメリカも世界の中心をやめるようだ。イギリスのCITY([the C~] シティー《London 旧市内の中心部約1マイル四方の地域; 英国の金融・商業の中心地;米国の Wall Street に相当》)とアメリカのウォール街(ニューヨーク市のマンハッタン地区にある街区。証券取引所のほか銀行・証券会社・商社が集まる世界金融の中心地。)が大きく毀損している。
さて日本はどうするか、冷泉彰彦氏は日本は慌てて新政権との人脈づくりをする必要はないという。新政権の「孤立主義」は、日本のプレゼンス(〔存在の意〕国外における軍事的・経済的影響力)を高める好機になるというが。