■カレンダー■
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30     
<<前月 2024年04月 次月>>
■お問い合わせは■
松野不動産電話番号:087-888-0011
■過去ログ■
社長日記過去ログ
■メニュー■
松野不動産ホームページ
■管理者■
ADMIN ID:
ADMIN PW:
■新着記事■
■カテゴリー■
■月別アーカイブ■
■リンク■
■その他■
■来訪数■
合計: 2322717
今日: 1753
昨日: 5663
 

プライベートバンカーカネ守りと新富裕層
元読売巨人軍球団代表だった清武英利氏が、2016年7月に講談社から上梓したショッキングなタイトル本です。私も清武英利氏を、読売新聞記者だったとは知らず、読売のお家騒動の「お騒がせ人」として見ていましたが、この本を読む限り、ノンフィクション作家としてこれからが楽しみな作家だと感じました。

小説の舞台は、日本とシンガポールです。シンガポールは、略字で「星」と表現するようです。アメリカ合衆国が、「米」と称するのと同じです。だからシンガポールへ行くことは、「訪星」と言うのだそうです。日本人富裕層が海外へ移住していることは、私も聞き及んでいるし周知の事実となっています。

プライベートバンカーは、1億円以上の金融資産を持つ金持ちしか相手にしない。彼らの定義によると、富裕層とは「1億円~5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」の資産を持つ者だそうです。おまけにこれは、不動産などを含まない金融資産のみの金額であります。

富裕層がシンガポールに居を構える理由は数々あるようですが、一番大きいのは、日本の税制には抜け穴があって、そこを巧く突けば相続税を払わずに資産を継承できるカラクリがあるとか。現地では、「相続後には晴れて日本に戻れる」と言われています。その大きな抜け穴が、通称「5年ルール」であります。

被相続人(親)と相続人(子)がともに5年を超えて日本の非居住者である時は、日本国内の財産にしか課税されない仕組みです。逆に言えば、5年以上日本の非居住者であれば、子や孫に相続したり贈与したりしても、海外の資産には日本の課税が及ばないのです。シンガポールには、相続税も贈与税もありません。

問題は、「日本の非居住者」という定義です。日本の税法には「非居住者」の明文規定がなく、一般的には「1年の半分以上を海外で暮らせば、日本に住んでいないこと(非居住)の証明になる」と解されています。つまり183日を海外で暮らし、それを5年間も続けていれば、海外資産の相続税・贈与税は払わなくても済むのです。

主人公の杉山智一は、40歳を超えた元バンカー。野村証券から三井住友銀行勤務を経験してここシンガポール銀行へやって来ました。ここで人として扱われず、富裕層の都合ではなくて、銀行の都合で日本人からのカネを巻き上げるドラマが続きます。そのあたりの駆け引きも、実に面白い展開です。

プライベートバンクは、富裕層の資産を管理・運用し、カストディアン・フィー(custodian fee信託報酬)を受け取るビジネスです。預金を広く集め、貸し付ける銀行や売買手数料で稼ぐ証券会社とはビジネスモデルが全く異なり、大金持ちの資産を守るために存在するので、「カネの傭兵」とも呼ばれています。

資産の秘匿場所と言えば戦前からスイスでしたが、スイスはあまりにも遠く、8時間の時差があって昼夜が逆転している。そして昨今のスイスは、米税務当局などから目の敵にされ、IRS(米内国歳入庁)の圧力に屈して秘密の扉をこじ開けられ、個人情報を開示しつつあるのです。スイス銀行神話が、脆くも崩れかかっています。

そこでニューマネーの人々は、日本に近いシンガポールや、香港の利便性に気づいたのです。IT長者に代表される彼らは利に敏く、動きが速い。かつてのシンガポールはタックスヘイブン(租税回避地)の代名詞で、いかにも税逃れを助ける国のように言われたこともありますが、今ではオフショア(課税優遇地)と評価されています。

そもそもオフショアの説明として用いられる「課税優遇地」と、脱税の温床であるタックスヘイブンの「租税回避地」は、税の優遇という点では同じ意味です。いずれも、所得税や法人税などが無税、あるいは税率が極めて低い国や地域を指すのです。

シンガポールや香港も当初、OECDの基準を受け入れてなかったのですが、OECDの圧力を受けて2009年に法改正を行っています。しかしグレーゾーンにいたシンガポールが、OECDのタックスヘイブン判定基準から外れ、さらにシンガポール政府が、富裕層優遇策を次々に打ち出したことで世界中の資産家が次々と流れ込んできたのです。

ストーリーは-、この後の展開に手汗握るのですが、解説はこのくらいにしておきます。ところで先に書いた「5年ルール」が、今年平成29年の税制改正で「10年ルール」になります。5年間の辛抱が、倍の10年になります。私はこれまでにも、税金を払わない非居住者は、日本国の横断歩道を渡るなと言い続けています。

われわれ庶民も僅かばかりの税金を払って、世の中を良くしようと努力しています。富裕層こそ、税金を払うべきです。実に面白い本でした。ところでシンガポールの香川県県人会の会長は、高松市出身の小松慎一郎(65)氏です。13日、浜田恵造香川県知事を表敬訪問しています。香川県の盆栽が、シンガポールでも話題になっているそうです。



| http://nobuchin.0011.co.jp/index.php?e=3711 |
| 社長日記 | 09:04 AM | comments (0) | trackback (0) |
PAGE TOP ↑