USAと中国、国内6ブロックから選出された合計7人が、午前中から『わが経営を語る』。会場には1200人が詰めかけ、Webで240人位が視聴する世界大会。内容から規模からも、往年の盛和塾世界大会を彷彿させるまでになっています。昨年第2回大会は8月稲盛和夫塾長の逝去をうけてすぐの開催で、悲痛な空気が漂う大会になりました。
発表内容は割愛しますが、ハワイで親の代から錦鯉を飼育する樹神太郎さん、中国盛和塾浙南から董贛明塾生の二人がオープニングで熱く語ります。中国ではまだまだ盛和塾活動が継続しているようで、その数3万人と日本の塾生数をはるかに凌ぐ勢いのさなかまだまだ増えているようです。止める装置がない中国盛和塾、国内では盛和塾は解散し、各塾が後継者育成のために継続していますが、中国での盛和塾は別格です。
そんな背景があるようで、その中から選抜された董贛明塾生は、懇親会でそんな現状を吐露されていました。確かに中国人経営者が経営の勉強をするのに、近年は欧米の『MBA』(経営学修士は、経営学を修めたものに対して授与されることのある学位である。)が、経済合理性において世界一優秀だとされて多くの中国人(日本人も)が学びに渡米渡欧した。
2000年代までは、欧米の経営学MBAが大きな存在感を持っていました。当時、中国の大学院で経営学を学んでいた人は、ドラッカーやチャンドラー、コトラーに代表される欧米の経営哲学が主流だったと証言する。しかし、中国の市場競争の歴史が浅いため、独自の経営理論や戦略が確立されていないことが分かりました。中国人のDNAにどこかあわない違和感があった。
その後、中国の書店で稲盛氏の本を見かけるようになりました。彼の著書はアップルのスティーブ・ジョブズの伝記と並べられ、翻訳書の種類も増えました。稲盛氏の経営哲学は、中国の経営者に心酔され、彼の経営塾「盛和塾」の塾生は中国全土に1万人以上もいると言われています。このようにネットでは紹介されていますが、最新情報では3万人、雨後の竹の子のように、とどまるところを知りません。
「稲盛和夫(北京)管理顧問有限公司」の董事長で、稲盛本の中国語版の翻訳や編集を28冊手がけた曹岫雲さん(77)は、その理由を次のように説明する。
「改革開放で市場競争が広がる中、行き過ぎた成果主義や、金もうけのために手段を選ばないなど、負の面も出てきました。そんな中で、京セラの経営理念でもある『全従業員の物心両面の幸せを追求する』という世界でも例を見ない稲盛さんの思想が共感を集めた。思想家の頭で経営者としての経験を言葉にし、実践を考え、わかりやすい言葉で表現した。そこがすごいところだと思います」。
曹さんは2007年に無錫盛和塾を立ち上げ、いまは中国全土の盛和塾のとりまとめ役を務める。『盛和塾は一代限り』という生前の稲盛さんの信念から、世界各地の盛和塾は19年12月をもって閉塾したが、中国だけは曹さんが稲盛さんに「直訴」したことで唯一、閉塾後も盛和塾の名を使うことが許されているという。曹さんは、今日のこの会場にも顔を見せていました。