適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のため対応が必要と言われていました。
その空き家対策特別措置法が今月19日の衆議院解散前に、参議院を通過して、早ければ今年度中にも施行の予定です。現在、全国の空家は約757万戸(平成20年)、25年の発表では820万戸と増えています。全国272の自治体が、空家条例を制定(平成25年10月)しています。
「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除くと定義されています。
これに加えて「特定空家等」とは、
①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にある空家等をいうと規定し、この特定空き家に対する強硬措置を決めたものです。
法では、国土交通大臣および総務大臣が定める空き家などに対する施策の基本方針に基づき、市町村が空き家対策計画を定めると明記しています。条例化が出来ていない市町村は、急がねばなりません。本来国土交通省の所管ですが、総務省や市町村が介在するのは、固定資産税が絡んでいるからです。
固定資産税は、市町村の貴重な財源であります。ざっと税収の6割ほどをこの固定資産税で賄っています。初期の法案では、老朽化によって強制的にまたは任意に解体した土地には、建物がある場合に更地の最高6分の1にまで軽減されている土地の固定資産税評価を援用しようと考えていました。
これだと市町村の税収が減るわけです。最終案では、解体して更地にした場合には、やはり本則通り最高6倍になる取り扱いにすると変更されています。市町村の反対が大きかったのですね。
さらに危険な状態にあって、特定空家等に認定されたならば、その時点から解体しようがしまいが、固定資産税の税率を更地並みに引きあげることにしています。強気な市町村です。
具体的な動きはこれからでしょうが、「所有権」というお化けが闊歩し、環境とか美観とか町並みとかに一切かかわりたくないと身勝手な所有者から、所有権を一部剥奪する法案とも言えると思います。
土地は全産業の基盤です。土地なくして建物は成り立ちませんが、土地を所有するか賃貸するかは、町の形成には特段の意味がありません。本来土地は、公益のために存在するべきであります。土地基本法には、少なくてもそう書かれています。
またこの空き家対策特別措置法では、これまで禁句だった固定資産税納税者情報の内部利用が出来るようにも書かれています。これまでは、市町村が掴んでいる納税者情報は、徴税のためだけにしか使えないとされていました。
私はこれも民主主義の呪縛、つまりお化けだと考えていました。あるものは、公共公益のために使うべきです。