このところの全国講演会で、経済アナリストの藤原直哉氏は「政界下克上」という表現を使い世相を言い当てている。面白い使い方をしていると感心しながら、米国大統領選の混迷(ドナルド・ジョン・トランプ氏の当選もありえる)やらフィリッピンのドテルテ大統領の登場など、言えば世界中が下克上の状態であります。
まずは東京都知事選で、そもそも舛添要一元東京都知事の失脚から、思わぬ小池百合子という瓢箪が出てしまった。それは産経新聞が一面で、「舛添要一東京都知事が湯河原別荘へ毎週公用車を使用」という記事を書いたことにはじまった。
背景には、舛添要一氏が、自民党都議連や2020年東京五輪組織委員会の動きに反旗を翻し始めたことから。一種のお灸のつまりだったのだろうが、舛添要一氏も東大卒で英語もフランス語も話せる秀才。「ゴメンナサイ」ですんだとことを、博学を披歴して国民の反感を買ってあのように辞任にまで追い込まれた。
舛添要一東京都知事も青天の霹靂だっただろうが、日本中が震撼した。そのどさくさへ名乗りを上げたのが、自民党の公認がとれないままに小池百合子が立候補を表明した。表向きは、オオカミの群れへ、羊が入っていってあっという間に餌食になる構図。
後ろには、小泉純一郎元総理大臣が陣取っているとも言われている。小池百合子候補は、これまでの選挙スタイルを破壊し、組織や支援団体がないまま291万票を獲得して、大勢の予想に反して当選した。これまさに下克上、世の中のシステムまでもが、変化し始めたのである。
またこの一連の流れを、経済アナリストの藤原直哉氏は忠臣蔵にたとえる。大石内蔵助役が小池百合子。吉良上野介役が、東京都議の内田茂前幹事長ら自民党都議連と森喜朗東京五輪組織委員長ら。一方浅野内匠頭は、猪瀬直樹元東京都知事。彼は副知事から知事になっても、都議連や築地卸売市場のボスと対峙していた。
つまり、いじめられていたわけです。その猪瀬直樹元東京都知事の仇のみならず、ないがしろにされた都民や国民の水面下に潜んでいた恨みまでをも、小池百合子東京都知事は暴き出してくれたのです。
私はどこにも登場しない東京都の銀行(新銀行東京)の、1000億円からの赤字と関係が深いと思っています。新銀行東京は、2003年に東京都知事石原慎太郎の選挙公約(中小企業対策)に基づき、ほぼその即断で、既存のBNPパリバ信託銀行を公有化する手法で発足したことから、一部では石原銀行とまで評されるものです。
このところの2020年東京五輪会場問題や豊洲新市場への移設問題等は、小池百合子東京都知事の登場がなければ、果たしてどうなったのだろうか。空恐ろしいことになったのではないかと心配します。
最後に何度か小欄で紹介していますが、「赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したのか」が含まれている本。「日本史の謎は地形で解ける」を書いた竹村公太郎著を是非お読み下さい。これからも日本では、「忠臣蔵」が忘れられることはないでしょうから。