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歴史の読み解き方・江戸期日本の危機管理に学ぶby磯田道史
日本人の乗った『日本丸』はレーダーが弱い。起きるとわかっていても、最悪の事態について考えることをやめてしまう。日本人は、起きて困ることを直視せず、とりあえず目先のことをやる、几帳面で、真面目で、一面困った人たちである。帯にそのように書かれています。2013年3月第1刷発行、私が読んだのが第4刷、2023年3月に朝日新聞出版から出た朝日新書の1冊。

国際日本文化研究センターの磯田道史教授は、1970(昭和45)年岡山県生まれの54歳。慶応大学大学院卒で、NHKテレビにもよく出てくる歴史家です。話しぶりには『温故知新』の考え方が徹底されていて、古文書(歴史書)を読んで今に役立てようとしている感じがし、私は好きなタイプの知識人だとみています。年のわりに若く見えて、学者らしい屁理屈が今風で面白い。

中身は解説書をご覧頂くとして、歴史研究者として、長期的に日本の歴史を見ていると、日本人は外部から大きな変化の波をうけると、変わりやすい。また政権の中枢が変わって本気になってトップダウンで改革命令が出ると、改革がとても効率的になりますとの下りは同感であります。アメリカからも独立し、日本独自の内政外交路線をさらに懸命に歩いてもらいたい。

またリテラシー(識字率)について、興味深い記述があります。『伊賀忍者の真実』で触れているのですが、明治15年の滋賀県の女性の識字率は5割で非常に高く、男性は9割に至っています。同時期の鹿児島県は滋賀県に比べていたって低く、男性で読み書きのできたのは3割ほど、女性は5%前後の状態でした。伊賀忍者の生い立ちも興味がありますが、『近江商人』がここの出身です。

日本が明治以降すばやく近代化ができたのは、識字率が高く、知的な国民だからとよくいわれていますが、実は全国均一に識字率が高いわけではなかったのです。明治前期までの日本では、識字率は京都の周辺と、東海・瀬戸内が非常に高く、東日本や東北・南九州は低かったのです。民がさぼっていたわけではなく、必要がなかったのです。

いまでもヨーロッパのEU諸国で所得の高いのは、かつて識字率が高かった諸国です。1850年頃、すなわち160年前の識字率の高低がそのまま経済格差となって、今日まで続いています。おそらく1600年から1900年までの300年の間、地球上では北欧を除けば甲賀もそうですが、京都周辺が最も民衆の識字率が高い農村です。このあたりは東アジアのなかでも、いちばん読み書きのできる人たちが暮らしていました。

ヨーロッパでは、北西へ行くほど識字率が高くなります。南東へ行くほど低くなります。なぜかというと、北欧など北西ヨーロッパはプロテスタントで、自分で聖書を読まなければならないからです。ところが南のスペイン・イタリアでは農奴制が強く残っているうえ、カトリックで教会の権威も強かったのです。

大袈裟に言えば、教会に聖書が1冊置いてあるだけで、神父様の言うことを聞いておれば天国に行ける。プロテスタントほどには、印刷された聖書を読む必要がなかったと言われています。また東ヨーロッパの方へ行くと、ギリシャ正教の地域も、同じように教会の権威が強く、農奴制が残存していましたから、識字率は高くありません。

教育は重要です。ヨーロッパで幕末の1850年に識字率が高かった国と、1979年になってGDPが1万ドルを超えていた国は一致します。つまり教育の高低は、100年以上のスパンで、その国の経済生活に影響を及ぼします。歴史学の目から見れば、短期的な景気に一喜一憂するよりも、100年後のことを考えて子や孫たちに、きちっと実のある教育をするのに税金を使った方がいいという結論が出ています。

紹介がほんの一部になってしまいましたが、面白い1冊です。『司馬文学を解剖する』も興味深いモノでした。お奨めします。



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| 社長日記 | 08:33 AM | comments (0) | trackback (0) |

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